生時体重と肥育成績との関係性

生時体重と肥育成績との関係性

Ⅰ. はじめに

「大きく産まれた子牛は、大きく育つ!」
オス・メス問わず、生まれが大きい仔牛は、その後大病をせずに順調に育てば、子牛のセリに出る時も大きい。たぶん、多くの生産農家さんが感覚的に感じていると思います。しかし、肥育農家へとバトンタッチした後の肥育成績はどうでしょう。すべての子牛を追跡するのはかなり厳しいのではないでしょうか。逆に肥育農家の立場から言えば、導入時の血統や産次数、DGなどは分かりますが、出生体重やその後の発育などは知ることはできません。これらの疑問をすべて解決できるのが一貫経営です。佐々畜産では、5年ほど前から一貫経営にシフトしています。そこで今回、「生時体重とその後の発育(肥育完了時)には正の相関があるのか」を検証してみました。

Ⅱ. 自家産の肥育成績

2019年1月~2021年5月までに販売した自家産の肥育牛は45頭いました。全45頭(病畜1頭を含む)の肥育成績を表にしています。平均枝肉重量、BMSは表にあるとおり、それぞれ525.8kg、9.91となっており、外部導入のみの成績では、枝肉重量 540~550kg、BMS 10.0~10.5くらいを推移しているため、自家産の方が少し枝肉重量、BMSともに低い傾向にありました。(注:価格は税抜きで表しています。)

自家産肥育成績まとめ+頭数BMS

まず、この45頭を去勢とメスに分けて比較してみました。全45頭の内、去勢 20頭、メス 25頭となり、メスの方が若干多い傾向にありました。肥育成績を比較したところ、図の通りで、平均出荷体重、枝肉重量ともに有意に去勢の方が大きい結果となり、平均BMSは去勢・メスで有意差はないという結果となりました。

Ⅲ. 生時体重別の肥育成績

この45頭の生時体重を見てみましょう。平均値は36.7kg。また、オスとメスで比較してみると、平均値はそれぞれ38.64kg、35.38kgとなり雄とメスで生時体重に有意差はないという結果となりました。

今度は、この45頭を生時体重が35kg以下の生時体重小と36kg以上の生時体重大の2群に分けて、肥育成績を比較しました。このとき、性別は不問としました。

生時体重大の群の平均出荷体重、枝肉重量、BMSは、それぞれ820.5kg、542.3kg、10.27となり、生時体重小の群は、それぞれ759.4kg、503.2kg、9.42という結果となりました。

これらを検定した結果、平均出荷体重、枝肉重量は、生時体重大の群の方が生時体重小に比べて有意に大きいと言え、ただし平均BMSに関しては、バラツキが大きいため、有意に高いとは言えないという結果になりました。

生時体重大小比較グラフ
生時体重大小での比較

Ⅳ. まとめ

結果から言えば、生時体重とBMSに相関関係はないが、生時体重と肥育後の出荷体重および枝肉重量には正の相関があることが分かりました。分かり易く言えば、生まれつき大きい仔牛は、「サシ」は関係ないが、その後育成・肥育を終えても大きくなることが分かったということです。
現在、新型コロナウイルスの変異株の猛威により、全国各地でさまざまな業種で多大なる影響が及ぼされており、養牛業界でも例外ではありません。そんな中、肥育農家の求める牛は、量質兼備の肥育素牛です。すなわち、「サシ」だけ入っている牛ではなく、「サシ」に加えて、枝肉重量が取れる導入牛が欲しいのです。
今回の結果から言えることは、生産農家や一貫農場では、産まれた時に大きい仔牛を作る必要があるということです。

次回は、「大きく産ませるには?」のお話しをしたいと思います。